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すまいる愛知住宅賞 (第28回)
愛知県住宅供給公社 理事長賞
ふるまいの庭

設計要件

豊田市浄水にあるこの敷地は、施主の祖母が畑をしていたという土地が土地区画整理によって代替された南西角地であり、公園や畑に面した南北40m以上の細長い土地である。

この浄水という場所は、昔は小高い山で畑を中心としたのどかな場所であった。その後都市計画によって開発が始まり、以前の風景が減りつつある。そこで、かつての”地域に開かれたのどかな風景”をこの土地に残しつつ、その家族らしい時間を楽しむことの出来る住まいを目指し、設計を始めた。

ふるまいの庭

40m以上の南北に長い敷地に対して、シンプルな切妻屋根の細長い建物を置き、南側の妻側には1700mmの深い軒出のある屋根を取り付けた。その屋根の下は、美容師でもある奥様がご主人やお子様の髪をカットするための場所であり、そして、地域に開放するお庭とプライベートな時間を楽しむLDKスペースとの中間領域となる。十和田石でできた土間空間は、冬には日差しを取り込んで熱を蓄え、夏には石の冷却作用で涼をとれる場所として機能し、街と家族を繋ぐ憩いの場となる。また西側には緑地帯としてのスペースをとり、約1mの高低差を利用しつつ樹木の配置に思慮することで、生垣を設けずとも視線を遮れるように工夫した。

このような工夫から、街とこの家族の両者に対して、ほど良い関係のお庭が生まれた。

街に対してのふるまいをもったこの庭が、長い土地、長い家、そしてこの家族が過ごす長い時を、やさしく包む器としてゆっくりと成長してくれることを願っている。

応募時のパネルはこちら(PDFファイル)

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設計者:服部信康建築設計事務所/服部 信康

講評:審査委員 久保田 英之

緩やかにカーブを描いた幹線道路沿いにこの住宅は建っています。道路に対して40mに及び敷地が接し、南には公園があり、絶好のロケーションをこの住まいは見逃していませんでした。板張りの外壁と勾配屋根のシンプルな形が、この細長い敷地に馴染み、1mの高低差を生かした緑地帯と深い軒先の縁側は、人を優しく包み込む空間を生んでいます。周辺環境に開きながらプライバシーを守る設計者の工夫も素晴らしいですが、内部のパブリック空間とプライベート空間の在り方では、建築主の割り切り方にも拍手を送りたい作品です。

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