各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞 (第28回)
(独)住宅金融支援機構 東海支店長賞
社山の家

愛知県東海市に建つ個人住宅である。敷地は宅地開発によって山を切り開き、緩やかに雛壇状に造成された敷地である。また地区計画内にあり周辺は建売住宅が建ち並び、画一的な街並みが広がっている。周辺一体の建物は区分けされた敷地に対して可能な限り北側へ寄せ、わずかばかりの庭を南へ配しさらには南側隣地の建物の背を望む暮らしを強いる状況となっている。そこでこの状況を打開する建物と周辺環境との新たな在り方を考える必要があった。

計画は敷地のほぼ中央へ建物を配置し、駐車場やアプローチを含め周辺へ空地を確保し、樹木を植えて周辺環境と連続させた。そして建物の屋根の上にさらに屋根をかけることで、屋上にもう一つの空間をつくりだし、室内のような庭のある暮らしを提案した。その庭には一体的に利用できるよう家族や友人が集まれる明るく大きなリビングを設け、庭全体を囲う壁は、閉ざされた空間のつくり方ではなく、壁の密度を設計し住まい手に合わせたセミオープンなつくり方とした。リビングからは庭までを一体の部屋のように感じることができるよう壁の密度を濃くし、庭にいるときは壁の隙間から外部を感じとることができるよう密度を薄くし、街の気配が現れるようにした。さらに空の広がりや眺めを楽しめるように階層を吹き抜けとし、そこにハンモックやガーデンスペースを設えることで、室内のように使われたり室外のように使われたりと、多様な活動が生まれる場とした。

建物が完成すると、室内のような庭からは光や風、空などの光景が建物の内部へ入り込み、人が動くことで内外が繋がったり離れたりしながら空間の大きさが変化していき、人の行為によって空間の質や名前が変わっていくような状態が現れた。室内のような庭を通して住宅と街が緩やかに繋がり、互いに呼応し合うような関係性を築くことで、多様な場や体感が生まれ、空間や人の感じる豊かさとなるのではないかと考える。

応募時のパネルはこちら(PDFファイル)

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設計者:+岩田知洋+山上弘建築設計事務所/岩田 知洋・山上 弘

講評:審査委員 松原小夜子

日の出とともに活動し、日没とともに休息する昼夜のリズム。伝統的な住まいでは、屋内で休息、庭で活動、あるいは屋内の奥で休息、表で活動などと、私たちの暮らしは、「横軸」で営まれてきた。しかし、現代の都市の住まいでは、立地条件等々により、こういった暮らしが難しい場合もある。そんな時の選択肢の一つが、「縦軸」の活用ではないだろうか。社山の家は、寝室と浴室を起点に、フロアをスキップしながら、台所、居間、壁付きバルコニー、屋根付き屋上へと昇る縦軸線が明快。住む人の暮らしの営みを陽光へと誘う秀作である。

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