すまいる愛知住宅賞 (第28回)
名古屋市住宅供給公社 理事長賞
Refill - 詰め替える
かつて繁華街であった名古屋市今池、以前ほど活気がないが、昔から住んでいる人が多く、下町の雰囲気が残っている。施主は、戦前からこの地に住んでいる両親の面倒を見るために、隣に家を建てることにした。この辺りは、商業地域の防火地域、耐火要求はコスト的にも苦労する。施主はこれからも長くこの地にいることを望んでいたし、耐火に大きなコストをかけるのであれば、長く住まい続けることをコンセプトに考えた。
長く住まうためのアイディア「詰め替える」という考えかた
100年先までを考えてみた。何世代が住み変わっていくなかで、それぞれが、その世代らしく住まうように変わって行きたい。そのため、耐火構造のコンクリート壁を100年使い、壁の内側は木造とし、すまいに合わせ変えていくことができるようにした。耐火構造となると施工のハードルがあがるが、木造であれば、大工の力で改修でき、すまいが柔軟に変えて行ける。また、コストのかかるコンクリートは100年使えるので、金銭的な面でもこれからの世代にやさしい。
詰め替え用コンクリート壁
外壁1時間耐火構造の準耐火ロ-1を採用し、外周はコンクリートの壁を2層分打ち上げる。外枠の面積は73m2。延べ床100m2以下の2階建てプランを考えると、必然的に外部ができ、それが中間領域(庭)となる。コンクリート壁の開口は、どの住まいでも採光が確保できるよう、シンプルに開けた。設備配管の躯体埋設は一切せず、開口や地面の少し上に開けた貫通口を使うことにした。この納まりであれば、将来の改修工事も、コンクリート躯体を傷つけることなく施工できる。地震力、風圧はコンクリートが負担するため、木造部分は構造負担がなく、柔軟なプランが計画できる。
設計者:裕建築計画/浅井 裕雄・吉田 澄代
講評:審査委員 谷村留津
下町の雰囲気が残る繁華街に住んでいる両親の面倒を見るために隣に建てた
長く住みつづけるために貝殻に見立てた防火性能の高い穴の開いたコンクリートの囲いを作り、その中にヤドカリのような、外皮を纏わない木造住宅を入れこんだ。
ビルの隙間に取り残されたような小さな家は都市景観の中でいかにも弱々しいが、このヤドカリ君はプログラムを変更しながら力強く、生き延びる予感をさせる。