各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞 (第32回)
UR都市機構中部支社長賞
川辺と道の窓をもつ家

まちの気配を生活空間につなぐ

過疎化が進行する愛知県豊田市稲武町の地域の再興の拠点となるゲストハウスのための、築100 年をこえる木造3 階建の改修計画。稲武町は塩の道とよばれる中馬街道(現国道153 号)と岐阜県中津川から静岡県浜松へと向かう秋葉詣街道(現国道257 号)が交差する場所にあったため、江戸時代には宿場町として栄えていた。計画敷地は中馬街道沿いに位置しており、名倉川の川辺に面している地面と、旧商店街の道に面している地面の、2 つのレベルをまたぐように建てられていた。川辺にはかつての大火を防いだといういわれのある大きなイチョウの木や、木橋跡の石垣があり、古くからの外構が残っていた。
旧商店街は、もともと宿場町であったことから、道に沿うように平入で建てられ、本物件を含め、通りに対して開口部を設けていた。自然環境の豊かな川辺と、人の行き交う道沿いの、それぞれの環境と本物件がつながり、本物件を通して道と川辺の環境をつなげることができないかと考えた。
計画物件は道に対して直行するように縦割の平面構成で、道側にのみ意識された平面計画であった。そこで、川辺に面する建物西面に既存躯体の外側にサッシを設け、プランを横割にすることで、ゲストハウスの空間から川辺に残る古くからの外構や、自然の風景を感じられるように計画をした。また、道側と川側に開かれた構成により、旧商店街を通りゆく地元の方、エントランスで休憩している自転車乗り、ゲストハウスでくつろいでいるお客さん、工房で家具を制作している事業者さん、川辺で遊ぶ子どもたちといった、多様な人々をつなげるきっかけを与える。
かつての宿場町のように、この建物が中馬街道を行き交う人々を引き留め、人と人の関わりをつくる結節点としての役割を持つ場所になればと考えている。

宿場町の再興を楽しむ

計画から施工まで建築主・住まい手・施工者・設計者が和気あいあいと打ち合わせを重ね、一部の工事では自主施工も行うことで、関係者全員の当事者意識が高まり、愛着と魂のこもった物件となった。

応募時のパネルはこちら(PDFファイル)

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設計者:TUNA Architects/森 友宏、鈴木 裕太

講評:審査委員 北川 啓介

風光明媚な旧宿場町の道と川の交差するほとりに建つ約100年前の木造3階建を、地元にゆかりのある建築主、住まい手、設計者、施工者が、基本計画から現場施工までを一致団結してリノベーションした物語のある作品である。もともとの建物が有した、一世紀前という建て方の規格に縛られにくかった時代的性格、加えて、山間という今も規律が強すぎない立地的性格、その両者を体験したい人々の民泊用の住まいへと仕立て上げている。ある種、地方での地縁による祭礼に似た営みの建築的体現と言っても過言ではない。現代の都市が羨むような意欲的な営為としても高く評価したい。

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