すまいる愛知住宅賞 (第33回)
愛知県知事賞
豊田の立体最小限住宅
愛知県豊田市に建つ、若い夫婦と子供ふたりのための住宅。東西に細長い敷地で、接道する西側道路の交通量が多く、南北両隣には建物が近接して建つものの、2 階レベルの南東方向には広い空を望む、といった周辺環境に呼応する計画とした。具体的には、間口2間×奥行7間半の 15 坪× 2 階=計 30 坪、高さ約 6m のコンパクトな箱を置き、高さ方向を 3 層に分割した構造フレームとし、2 層分(約 4m)のダイニングキッチンとリビングが 2m のレベル差で緩やかに連なる立体的な構成とした。そして、リビングの南東方向に大きな窓を設けて都市の空隙と繋ぎ、ダイニングキッチンの道路側に付属する屋根付きテラスの正面をメッシュ、側面を半透明壁とすることで、街との距離感を適度に取りながら、変化する光や風を存分に取り込めるようにした。
一方で、年間を通した快適性と省エネ性の確保には外皮と設備の工夫も必要となる。そこで、限られた予算の中、徹底的に少ない部材と低価格な機器の組み合わせで高い性能を確保する工夫を重ねた。外張り断熱により内装材を省き、木の構造や下地、配管、配線を現しにしたことで、内観は温かみのある木質空間となり、住まい手は建物の仕組みを理解でき、自身で直したり手を加えていくことが可能となった。内(家族)と外(都市)に開かれ、光や風、自然素材に溢れたデライトフルな住宅を、最小限の物質により実現する、地球環境危機の時代における都市住宅の新たなプロトタイプの提案である。
設計者:川島範久建築設計事務所/川島 範久、國友 拓郎
講評:審査委員 森 哲哉
東西に細長い敷地に建つ家族4人のための住宅。書類審査では、温熱環境、土中環境、省資源といった地球環境問題と、省エネローコスト住宅のプロトタイプへの提案に目を惹かれた。現地を訪れると外部木材や母屋に保護が施され、折板と雨樋の納まり、露出配線、仕上げなどへの細やかな配慮が伝わってくる。内部は木質に溢れ、間口2間×奥行3間×高さ4mの空間が、西側と東側に2mのレベル差で接続されている。2つの大きな空間の連なり、南東の開口部からの採光、西側のまちとの距離感が心地よい。今日住宅に求められる課題に止まらず、建築へと昇華された住宅である。