各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞(第33回)
佳作
7部屋のコートハウス

愛知県の郊外に建つ住宅。新築にあたり建主は、SNS や雑誌などから集めた購入予定の家具・照明機器・多種多様な仕上げ、知り合いの作家に描いてもらう絵画など、部屋を彩る様々なものたちのイメージを持っていた。それらひとつひとつの要望は建築の骨格を決めるには断片的であったが、うまく混ぜ合わせる方法を考えながら設計を始めた。

敷地は低層の住宅が立ち並ぶ閑静な住宅街。付近の交差点は道路が直行しておらず、昔からの不整形な街区の形状が残るまちである。計画敷地もその影響を受け平行四辺形の土地形状となっている。はじめのうちは平行四辺形のボリュームを検討していたが、敷地とボリュームの関係とは別に、内部の切り分け方を考える必要があるというのを不自然に感じた。まちの成り立ちと家の成り立ちが連続しているようで連続していないように感じられたのである。そこでボリュームを複数に分け、それぞれのボリュームを敷地境界線に正対させる事を考えた。ボリュームの数は要望を考慮して7つとし、まちとの境界にむかって 7 部屋を建てた。各部屋の梁を目の前の敷地境界線をセットバックするようにして現し、敷地の中心付近にはまちから距離をとった余白としての中庭を設けた。街区の特徴から部屋の集まりがつくられたコートハウスである。そして、部屋を超えた多様な領域が生まれることを期待して、中庭に接する面は全てガラスとし各部屋を様々な距離で繋げようとした。つまり部屋を部屋にひらいていった。また、3 種類の壁仕上げ(1. 柱現わし 2. 合板OS 塗装 3. 合板 EP 塗装)を部屋単位での統一を避けながら用いる事で、離れた部屋の壁同士の仕上げが結びつくようなあり方を考えた。それらのことによって、自分の部屋と中庭をはさんだ向かいの部屋を同じ領域と感じ、距離の遠い部屋を隣の部屋より近くに感じられるようになる。壁がたくさんある部屋の集まりであると同時に、様々な距離を内包したワンルームとしても感じられる空間を目指した。

部屋を起点に、外に広がるまちの構造や歴史について考え、内に置かれるであろう家具や小物について考えながら設計を行った。住宅の設計としての与件を少し広い範囲で捉え、具体的につくりあげる構造や仕上げがそれらと様々な階層で結びつく。この住宅は、まちの風景と生活の交点としての部屋の集まりである。

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設計者:葛島隆之建築設計事務所/葛島 隆之

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