各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞 (第34回)
愛知県知事賞
Life In Wood

小牧市に建つ、夫婦とその子供のための住宅。主要道路と一本奥側に平行に通る道路の間に、施主両親とその息子夫婦の家が配置されている。また、その北側こは両親が営む自動車整備工場が隣接している。
息子の家(施主)は奥側道路に面する150㎡程の敷地。両親の母屋、工場、道路との関係も含め他者との距離間が比較的狭隆な敷地で、如何に自分達だけの空間を得られるのか、また平穏に暮らしていけるのかが主なテーマとなった。Life ln Woodと題されたこの住宅は森の生活をイメージした家族だけの場所としてつくられた。鉄骨ラーメン構造のメインフレームに、外装にはW180×H175mm、内装にはW120x H175mmの国産杉の無垢材を積んで構成している。外側スクリーンの奥行きと内部の外壁との間にバルコニーのバッファゾーンを設けることで外部から程良い距離感を得られ、リラックスできる室内空間を実現している。無垢材で囲まれた空間で、家族に温かさと安らぎをもたらし、森の生活を享受させるのである。

福島県産の杉を使用している。2011年の東日本大震災及び福島第一原子力発電の事故により被害を受けた森林地域の復興を目指し、2013年から[ふくしま森林再生事業]を今日まで取り組んでいる。福島は県土の70%の広大な森林地域を有しその一部が被害を受けた。その回復と復興支援を目指し森林資源利用の活発化を即している。Life in Woodの計画が始まったのは2015年、その後全国の杉の無垢材の地域、コスト、流通、製材などを調べた結果福島産にたどり着いた。鉄骨のフレームにログハウスの手法を用い国産の杉材で積み上げた構造体は、通常の在来木造のプレカットによる歩留まりが70%~90%に対して、Life in Woodは92%にまで上げることを実現した。森の樹木を余すことなく利用する。
木のカタマリ、その厚みで建築する。これらプロセスを得て、住民が森と近づき森の生活が始まるのである。

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設計者:株式会社bandesign/伴 尚憲

講評:審査委員 川野 紀江

鉄骨ラーメン構造とログハウスが融合したシステムで構成された、3階建ての住宅。積層された杉の丸太の質感は、無垢材に囲まれ「森の中で暮らす」という施主のイメージに合致し、断熱性能数値だけでは表現できない温もりや安心感をもたらす。外観は工場が点在する周辺の風景に馴染み、部材断面が大きい外側スクリーンを通した内側からの眺望は程よく周辺を感じる。現地審査では、外側スクリーンの視線への作用とともに、バルコニーのバッファゾーンにより温熱環境が整う効果を体感した。福島県産材の利用の他、細部にまで施主、設計者の熱意が伝わる住宅である。

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