すまいる愛知住宅賞 (第35回)
住宅金融支援機構 東海支店長賞
宮西の遺跡
敷地は、前面道路が幅員20mある交通量の多い主要幹線道路沿いにある。この場所で居心地の良い、落ち着ける住まいを成立させるためには、前面道路からの雑多な視線と騒音を調整する必要があると感じた。近隣には小学校があり、児童の通学路になっているため、通勤通学時でも安全に自動車の出入りがしやすい駐車スペースを、初めに計画した。回転しやすい駐車スペースを確保した上で、残された敷地に建物を計画するあたり、駐車スペースの奥に、外界(幹線道路)と内界(住居空間)に光、風、緑、視線の抜けといった外との繋がりをつくるため、敷地の中央付近には外部空間としての中庭を設けた。
1階部分は書斎と離れとし、駐車スペースから中庭までの外部空間を結界をくぐる山門のような玄関アプローチとした。
2階の寝室空間は、敷地の南北を貫く屋根架構を持った細長い形状が、1階の外壁とはズレを持って載ることで、様々な半野外空間(軒下やバルコニー)を生み出している。
結果、ふたつの岩の上に横たわった丸太のような、もしくは、弥生時代この場所で実際に建っていたであろう高床式倉庫を想起させる佇まいの住まいとなった。
設計者:岩間建築設計事務所/岩間 昭憲
講評:審査委員 野々川 光昭
四つの緑豊かな庭は触れるくらい生活の身近にあり、道行く人も庭を享受できる。車だまりの前庭から建物下の外土間に向かうと、木漏れ日の中に誘われ中庭に導かれる。庭からの光、風、緑を感じる室内は、自然素材に抱かれ心地よい。1階は外土間を介して家族の居室と書斎を離し、2階は両端の妻壁高窓からの光が交わる木架構下に各室が繋がっている。周辺との関係、家族の場所と距離、自然との関わりについて緻密に練られた内外空間である。埋蔵文化エリアの中で木々に覆われた建物は、以前からこの場所に建っていたかのように地域の歴史と文化を彷彿させる。