すまいる愛知住宅賞 (第29回)
UR都市機構中部支社長賞
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敷地周辺は瓦屋根の住宅などが密集した住宅地である。
周辺のコンテクストから派生した連続する切妻屋根の下に4戸の集合住宅が並列する構成となっている。どの街においても建物間に緩衝スペースが存在するように、その余白のあり方によって隣り合う建物の関係性も異なるものとなる。
余剰地のように存在する建物間の余白を積極的に住空間に取り入れるとどうなるだろうか。住宅内部でありながら街の余白と連続するものとして光や風と共に風景も連続できたら。住戸間の余白は住人にとってエントランス、階段室、インナーガーデンとして機能し内部であり街の一部でありという曖昧な場所として計画されている。
室内は2層の気積をもつ大らかな空間となっており、屋根の棟からのトップライトが強い光を下階に導くと同時に内部に彩を提供し、また屋根の谷に設けられた垂直のスリットからは間接光がインナーガーデンに届けられる。その他の窓からは周囲の視線を遮りながら外部の風景を室内に導けるように位置が決定されている。
上下階の騒音、共用通路とプライバシー、階ごとに異なる通風・採光など集合住宅を計画する際に問題となる課題を解決しながら木造2階建ての長屋として計画を行った。
設計者:佐々木勝敏建築設計事務所/佐々木 勝敏
講評:審査委員 笠嶋泰
50平方メートルの4軒の戸建住宅を、インナーガーデンと名付けた玄関や階段のある屋外のような内部空間で繋げた長屋建ての賃貸住宅です。このインナーガーデンが遮音用としても通風用としても機能するとともに、1階まで届く2階の天井に設けられたトップライトからの自然光が、50平方メートルの住宅とは思えぬ広々とした住まいを創り上げています。
家賃がやや高めに設定されていますが、有り余る豊かな空間が「ゆとりある住まい」を推進するすまいる愛知住宅賞に相応しい作品としています。