すまいる愛知住宅賞 (第30回)
名古屋市住宅供給公社 理事長賞
丁田町の家
4人家族のために計画された賃貸駐車場併用住宅。
敷地は名古屋市名東区丁田町。地下鉄の駅から徒歩10分圏内であり、高速道路のインターチェンジも近い。小売店や飲食店も多数点在し、街で住むことの利便性が非常に高く、今後も人口増加が望まれる街である。そのため、敷地周辺に存在する駐車場は、この先、低層集合住宅が建てられていくことが予想される。そこで、駐車場に対する需要に応えつつ、窓からの眺望や環境に配慮し、街の景観にも貢献するよう設計をおこなった。
RCの人工地盤で広いテラスを含む居住スペースを2、3階に上げ、地盤周囲の花壇に緑を植えることによって、光・風などの自然環境とプライバシーの確保、貸し駐車場として地域へのスペースの提供、街への景色の提供を同時に実現している。2、3階は木造にすることで、今後の改修や、内装の変更などを容易にし、中学生の子供が、将来孫世代とともにこの家に帰ってくる可能性にも対応している。
住宅内部では、2階の門壁と床の高さの差だけで緩やかに行為の場を区切り、3階は空間を全体的につなげたまま、薄壁で視線だけを区切る。3階の行為の場の床高さを動線の場の床高さより60㎝高くし、床のズレによって隙間をつくることで、2階と3階の空間を繋げて一体感を持たせるとともに、光が差し込み、風が通る計画とした。
今後は大量のものを「所有」するのではなく、少ないものを互いに「共有」していく時代である。街に対して開き、持ちつ持たれつの関係を構築する、シェアの考え方で設計を進めた。周辺住民に駐車場を、街に人工地盤の緑の風景を、変わりゆく家族関係に居場所を、それぞれシェアしていく。時代や環境の変化に対応して、貸し方、使い方、住まい方をフレキシブルに変えていく、プロトタイプとしての提案である。IMCのような住宅がこの地域で増えることで、街としての魅力がさらに高まることを期待している。
設計者:co2works一級建築士事務所/中渡瀬拡司
講評:審査委員 柳澤 講次
人工地盤上にある住宅、時間の経過とともに住宅への必要要素は変わってくる。その経年に対して、この地盤は大きな力を発揮するだろう。
これから訪れるオーナーの家族構成の変化、高齢化にも簡単に対応し、寿命が長い住宅になると思う。資産価値を保ちつつ長く使える家、この家には次世代への「ゆとり」が感じられる。