すまいる愛知住宅賞(第31回)
佳作 愛知県森林協会長賞
山王の住宅
「一つの曲面がつくる多様な屋根下空間と包まれたような屋上空間」住宅地に浮かぶ大きな1つの曲面が、下方向には大きなワンルームを作り出し、上方向にお皿の中のにいるように柔らかく包み込む屋上空間を作り出す。密集地にあって開放的な内部空間と適度にプライバシーが確保された屋上空間とを同時に確保する。
「曲面屋根とテンション材に掛かる変容する応力」多角形構造とし仕上げ材で曲面をつくるでもなく、曲げ集成材や曲げ鉄骨材で曲面をつくるでもない、非常に薄く偏平した断面のフラット材を使用した重力とテンションによって曲面を生成する新たな曲面の作り方。重力のみのたわみだけで屋根を形作ると人が乗ったときの積載荷重に応じて建築が変形していき崩壊してしまうため、想定最大積載荷重分をあらかじめ引っ張ってたわませて固定するプレテンション構造にした。屋上に人が乗ると下部の垂直柱に掛かるテンションは徐々に減っていき、最大150人(40kg/㎡)に達するまで圧縮が掛からないように設計されている。屋上の積載荷重と引張テンションが、時によって差し引きしながら、建築の形状を一定に保っている。
「空間をやわらかく規定するランダムな極小径柱」ワンルーム内にランダムに配された極細の木テンション材は家具の配置やスペースのまとまり、動線と同時並行で設計されている。柱のように見えるが、触ったときの振動がそこに働く大きなテンションを実感させる。通常の木構造とは異なった構造システムを採用しているが、テンション材に木材を採用し視覚的に普段の木造に近づいたことで居場所としての空間性がでてきたのではないかと思っている。
「精密な木材 - 集成材のラミナ配列を設計する」使用される約1000本のラミナ材を積載荷重試験して得られた個々のデータを基に、ラミナの配列を設計することで12本の「精密な木材」の梁を製作し、本計画の応力図に合致した木構造を実現した。
設計者:studio velocity 一級建築士事務所/栗原健太郎・岩月 美穂