各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞 (第31回)
名古屋市長賞
20年住宅

街に対して大きく開くのではなく、また閉じて内向的な世界をつくるのでもなく、外部が内部に少しずつ染み入るような空間をつくりたいと思った。
敷地は南側の前面道路しか開くことができず、敷地面積が小さいため道路から引きを取ることもできない。また道路は工場へつながるため通行量が多い。
そういった環境において導き出した回答はガラス戸と網戸の間に空間(内庭)をつくるということである。光や風と多少の雨が入る半外部空間で、人の出入りはできない。網戸の室内側が少し暗くなることで、昼間は中から外はよく見え、外からは見えにくい。内庭には木が植えられ、三和土の土間で、壁や床はラーチ合板などの構造材あらわしというラフな仕上げである。ここでは子供が安全に遊ぶことができる。

内庭につながるコンクリート土間のリビングや2階寝室は柱や梁の間だけ仕上げられた状態で、ラーチ合板よりやや肌理の細かいラワン合板が貼られた半内部的空間である。
次のダイニングや2階スタディコーナーは家具や手すりにラワン合板よりさらに肌理の細かいシナ合板が貼られ、より内部化されている。

一番奥の白いPタイル床のキッチンや水回り、2階子供室の建具や家具はポリ合板で仕上げられていて、北側の暗さをやわらげている。
このように南から北に行くにしたがい仕上や床レベルがグラデーショナルに内部化(肌理の細密化)される。明るさの違う4つの層を重ねることで奥をつくり、居場所の性格づけをしている。大開口やコートハウスとは違って都市に構えすぎない自然な連続性を試みた。

応募時のパネルはこちら(PDFファイル)

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設計者:諸江一紀建築設計事務所/諸江 一紀

講評:審査委員 川野 紀江

約130㎡程の敷地に建つ、居住予定期間20年の若い夫婦の住宅である。南側道路に面する半外部空間である三和土の内庭から、コンクリート土間のリビングを経て、ダイニング、キッチンへと、壁や床の素材が変化し徐々に内部化していく。この外部から内部空間への繋がりが心地よく、都市部での庭の作り方のひとつの解を提示している。1階と2階、2階から外部への視線を通す吹き抜けを中心に構成された2階は、住み手の変化に応じて区切ることも可能で、限られた面積の中で各所に開放的な空間を持つ魅力ある作品となっている。

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